古いハーバードビジネスレビューを久しぶりに読み直してみての自分なりの解釈のメモです。
複数の記事をミックスして解釈している上、言葉は適当に翻訳しています。
(そういう意味では、誤った解釈をしている可能性や独自解釈の可能性があります)
職場の孤独の問題と社会的なつながりの効用
孤独の原因と悪影響
孤独が実際に過去と比較して増加しているかは実際のところ、過去は可視化されていなかっただけの可能性もあるが、現代で孤独を感じている人は多数存在し、問題となっている。
それは、業務の性質が変わる中で、社会的なつながりは減少傾向にあることに起因する可能性がある。
「社会的なつながり」がなくなることで、人は孤独を感じ、孤独はストレスをもたらし、仕事の質・健康に悪影響を与える。
「社会的なつながり」の効用
悪影響が大きい孤独を和らげる効果のある「社会的なつながり」は仕事への没頭により直接的にパフォーマンスを上げる。
また、間接的にも自尊心や自己肯定感を高めるため、体験を前向きにとらえさせることで、精神的な健康に良い影響を与える。
社会的つながりを作ることで、孤独によるネガティヴな影響(協業が行われない、ストレスによる健康への影響)をやわらげ、社会的つながりによるポジティブな効果(成果や自己肯定感)につながる。
孤独も社会的なつながりも伝染する
尚、社会的な孤独を感じると、孤独感からさらに孤独になろうとする動きも観測されている。
そして、孤独により友人関係を断ち切られた側も、孤独感を感じていく。
一方で、社会的なつながりを作る向社会的行動(援助)も伝染する。
例えば、与え手と受け手を分け、与え手に親切行為をするように指導した結果、与え手は憂鬱な気分を感じることが少なくなり、受け手は幸福度が上がった。
また、受け手自身が向社会的行動をとる可能性も高まった。
「弱い社会的なつながり」でもポジティブな効果が大きい
被験者に、コーヒーショップの店員に対し、社交的な会話をするように促した結果、ショップでの体験価値は高まった。
同様に、遊園地の列に並んで待っている際に、知らない人との交流するように促したところ、待ち時間が短く感じる上に、遊園地の体験価値も高く評価する傾向にあった。
つまり、社会的行動は孤独を軽減するだけではなく、環境に対する満足度を高める。
このような、「弱い社会的なつながり」は「社会的なつながり」とみなされづらいが、実際には胸の内を語る相手の半数程度は「弱い社会的なつながり」でつながっている相手という調査もある。
つまり「弱い社会的なつながり」は思いがけない恩恵をもたらしている可能性がある。
一方で「弱い社会的なつながり」であっても自然には生まれづらい
上記の通り、「社会的なつながり」による恩恵は弱いものであっても双方にとって大きいが、実際には「弱い社会的なつながり」も自然には生まれづらい。
①相手にされない不安感②話を適時に切り上げられなくなる心配の2点のハードルがある。
そのため、他者との交流は幸福度が増すにもかかわらず、知らない人同士は日常的にお互いを無視しあう傾向にある(職場でも同様である)。
そのため、「社会的なつながり」による効用を得るためには、ハードルを乗り越える意識や仕掛けが必要である。
「社会的つながり」を築く方法
質の高い「社会的なつながり」を意識させる
質の高い関係は親切心や思いやり、寛容さを特徴としなければならない。
これは甘えにつながるという批判もあるが、それ以上にポジティブな感情がパフォーマンスや復元力を高めることが研究の結果として得られている。
お互いの援助を奨励する。
従業員それぞれが互いに援助しあうことで、肯定的な「社会的なつながり」が築かれる。
同僚のプライベートを知る機会をつくる
個人生活の共有の機会を設定することで、社会的なつながりが築かれやすくなる。
社内イベントの問題点
企業は定期的に強制参加の交流イベントを開催するが、参加者には居心地がわるく、疎外感さえ感じさせるケースもある。
例えば、強制的な昼食会などは、結局社内の仕事の話ばかりになり、「社会的なつながり」に発展しないような形に収まる場合がある。
実態として、社内イベントが良い方向に働く可能性は低いため、社内ではなく、社外でのつながりを奨励するようなアプローチを検討する必要がある。
職場のイベントにおける課題
職場の同僚との休日のイベントや社員旅行などは近年ではあまり見られなくなった。
そのイベント自体が概してつまらないイベントである点はさておき、職場のイベントによる「社会的なつながり」獲得は難しい。
共通の基盤による「共通情報効果」の負の側面
異なるバックボーンを持った人々が集まった場合、「共通情報効果」により、共通の話題に即座に引き寄せられるようになる。
「社会的なつながり」を構築するためには、互いの個人生活の情報をやりとりすることが効果的だが、職場の集まりの場合、共通の話題である仕事の話が中心になる。
結局仕事の愚痴や社内の噂話に終始してしまうことになる。これでは「社会的なつながり」は生まれない。
「同類性」を求めることによる負の側面
また、人間は自分に似た者を求める傾向があるが、自分と似ていない者には近づきたがらないという負の側面がある。
その負の側面によって、職場のイベントは、中々新しい人々と知り合うような発展性のあるイベントにはならず、おおむね、既知の人々との交流の場になる。
社会的なつながりと、職場の関係性の食い合わせの悪さ
職場のイベントで「社会的なつながり」を作ることが難しい理由として、ニーズに基づいて他社に与える「共同的関係」と見返りを期待して与える「交換的関係」の混合が必要になる点がある。
通常、職場では「交換的関係」が多い。そのため、「交換的関係」にある相手に対して、弱み(ニーズ)を見せることや情緒的なサポートを求める「共同的関係」でのアクションを行うことはなかなか難しい。
余暇を与えることで「社会的なつながり」を作らせる
職場のイベントで「社会的なつながり」を作ろうとするのは、実態としては困難である。
目的としては従業員同士で社会的なつながりを築くことで孤独感を軽減させることかもしれないが、逆に本物の「共同的関係」から従業員を遠ざけることで、孤独を助長することになる可能性もある。
そういったことを鑑みると、職場のイベントで従業員の余暇を吸い取り「社会的つながり」を無理やり作らせるのではなく、余暇を与えることで「社会的なつながり」を作る時間や余裕を与えることで、孤独に対抗するという考え方もありうる。
テクノロジーは「社会的なつながり」を深める役に立つのか
テクノロジーはつながりを助ける
組織の抱えている問題は、スタートアップから大手企業まで共通しており、コミュニケーションである。
社員が状況をつかめないと感じられる状況では、組織に対する信頼度が下がり、結果的に孤独が深まる。
そのため、「社員が組織全体を見渡せる」と感じられるか、自分が全員で何かを成し遂げるプロセスの一環を担っているのだと実感できることが重要である。
その帰属意識が孤独感の軽減につながる。
その点、Slackなどのコミュニケーションツールを利用することで、多くの人に質問を投げられ、援助を受けることが出来る。
結果として、それは孤独感をなくし、「社会的なつながり」を生むことにつながる。
オンライン上でのコミュニケーションは微細な表情などは伝わらないが、絵文字やGIFなどを利用することで、ニュアンスを表現することも可能である。
オンラインであるからといって、必ずしも適切なコミュニケーションをとることが困難となるわけではない。
面前のコミュニケーションは依然として重要である
一方で、面前のコミュニケーションの優位性は依然としてあるため、テクノロジーを活用したコミュニケーションの良さと融合していくことが重要である。
内容が単純明快な場合はテクノロジーを利用したオンラインの非同期コミュニケーション、内容が複雑で高い信頼性を必要とする場合はオフラインの同期的なコミュニケーションを利用することが適切である。
テクノロジーを利用したコミュニケーションの習熟には時間が必要であるが、テクノロジーを利用したコミュニケーションにより、より効果的で効率的なコミュニケーションを行う余地がある。
結果的に従来型のコミュニケーションを行うべき事項に重点的に時間があてられるため、従来型のオフラインのコミュニケーションの価値も高まると考えられる。
まとめ
要するに、以下のような話であり、基本的に感覚に合いますね。
- 孤独はパフォーマンスを下げる
- 「社会的なつながり」はどんなに弱くてもポジティブな効果がある
- 孤独も社会的なつながりも伝染するため、その効果(あるいは悪影響)は無視できない
- 相互の支援やプライベートの開示が「社会的つながり」に発展しやすい
- 一方で職場が動機づけをする場合は困難となりやすい点に注意が必要である
- オンラインとオフラインの双方をうまく使うことが重要である。
個人的にも、こういう問題に対する施策を打つことがあり、実際に困難さと効果を感じてきた部分はあるので、こうやって自分の感覚と他者の論文のすり合わせを行うと、顧みることができて良いです。
社内イベントはクソだ!というのは簡単な一方、従業員サイドが経営者から動機づけを命じられた場合に「社外のつながりに任せます」とは言えないので、「社外に期待」という結論はなかなか難しいのですが、つながりを生む動機づけ施策を周囲に納得させる理論武装や、効果的な施策の検討には使えそうです。